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会社の経営が苦しくなっている経営者様へ
会社を経営していると,市況の変化や取引先の倒産といった予期せぬ事態により,不本意ながら経営継続が不可能な状態になってしまうことがあります。
銀行への返済ができない,取引先への返済ができないのは,途方に暮れてしまう状況ですが,少しでも早くご相談をいただくことで,できるだけ円滑に会社を終了させることができます。また,できるだけ早いご相談により,経営者ご自身の生活を,少しでも守ることが可能となります。
経営継続が不可能となった法人の債務を整理する方法としては,法人破産のほか,民事再生等の方法もありますので,当事務所でも,ご相談に来られた経営者の方に,いきなり破産を勧めるというのではなく,御社にとっての最善策をともに検討いたします。
仮に破産を選択せざる得ない場合も,破産手続には一定程度の費用が発生するため,破産手続の費用すら支払えない段階に至っていれば,破産すらできなくなってしまいます。これでは,貸し倒れになった取引先が損金処理すらできなくなるため,取引先に対して,二重の損害を与えてしまうことになります。
これに対し,一定程度の手持ち資金を残している段階で破産が決断できた場合には,破産手続きが可能になる上,従業員への最後の給与支払いができるなど,周囲にかけてしまう迷惑が,できる限り少なく済むのです。
このため,事業が継続できない状態になったとお考えの経営者の方は,お早めにご相談いただければと思います。
会社が破産できるのはどんなときか?
会社が破産出来るのは,①支払不能と認められるとき,②債務超過と認められるときに限られます。
支払不能とは?
債務者が支払能力を欠くために,その債務のうち弁済期にあるものにつき,一般的かつ継続的に弁済できない状態とされ,次の4つの形式的要件を満たす必要があるとされています。
・支払能力を欠いていること
・弁済期にある債務を弁済できないこと
・一般的かつ継続的に債務を弁済できないこと
・客観的に見て支配不能に当てはまる状態であること
債務超過とは
破産者がその財産をもって債務を完済することが出来ない状態のことをいいます。
債務の総計額が資産の総計額を超過している場合であり,法人の場合は,決算書の貸借対照表や損益計算書などで赤字になっていれば債務超過を疎明できるでしょう。
法人破産の流れ
破産申立準備
↓・受任通知の発送(しない場合もある)
↓・申立書類の準備
↓・従業員への
↓・取締役会・理事会の承認
1 破産申立
↓ 管轄裁判所へ申立書を提出。
2 裁判所による審査
↓・破産開始決定の要件の審査
↓(審尋(申立人への聞き取り)が行われる場合もある。)
3 破産手続開始決定・破産管財人の選任
↓
4 破産管財人への引き継ぎ
↓
5 破産管財人による管財業務
↓・換価手続き,債権調査等
6 債権者集会
↓
7 配当手続き
↓
8 終結
破産手続を選択するメリット・デメリット
メリット
・会社の債務がなくなる
個人の破産の場合と異なり,会社そのものが精算されてなくなってしまうので,通常の債務だけでなく,税金等もなくなります。
債権者からの取り立てもやみ,平穏を取り戻すことが出来ます。
・適正に精算手続が進められる
破産法に則って,裁判所の関与の下,適正に会社の清算を行うことが出来ます。
・債権者は損金処理ができる(破産できない場合と比較して取引先への迷惑が少ない)
破産すらできない状況になってしまうと,取引先は,債権が回収できなくなっただけでなく,当該未収金を損金処理することすらできなくなり,取引先へ二重の迷惑をかけてしまうことになってしまいますので,周囲に迷惑をかけたくないという理由で破産をためらっている方がおられたら,この点も意識することが必要です。
デメリット
・事業継続ができなくなる
会社は清算することになりますので,事業の継続はできなくなります。
・財産を失うことになる
会社の財産は換価され債権者へ分配されることになりますので,会社の財産が残らないのは当然ですが,中小企業の場合は代表者が連帯保証をしていることが多いかと思いますので,多くの場合,代表者個人も自己破産する必要が出てくるでしょう。
民事再生とは
民事再生とは,裁判所に,民事再生の申立を行い,裁判所の監督下で,債務者が業務遂行や財産の管理を維持しながら,債権者の多数により可決された再建計画に基づいて経済の再生を図る手続です。債権者の多数による同意を得ることを条件に,負債を大きく圧縮することができます。
ですが,実際に民事再生を成功させるためには一定のハードルがあり,少なくとも次のような条件を満たすことが必要となるでしょう。
・債権者の賛成を得られる再生計画案(早期に事業黒字化ができる具体的事業改善計画)
民事再生を申し立てた会社は,債権者に対し,再生計画案として,債務免除の割合,弁済期間,分割払いの額などを提案します。
この再生計画案について,債権者集会で,賛成の決議をしてもらう必要があります。
ですが,計画案が実現可能性のあるものであると判断されないと,債権者から賛成してもらえないため,早期に事業を黒字化できるような具体的な事業改善計画を立てる必要があります。
・手続費用や当面の運転資金を用意できること
手続には,裁判所に納める予納金が最低でも200万円程度かかりますし,専門家への報酬も併せると,相当額の費用がかかってしまいます。
そのため,ある程度資金に余力があるうちに決断した場合でないと,難しいでしょう。
・税金や社会保険料の滞納額が少ないこと
税金や社会保険料は免除を受けることができないので,これらの金額が大きい場合には,民事再生手続を行ったとしても事業の健全化は難しいでしょう。
・税務上の問題をクリアできること
債務免除を受けた金額は,税務上,債務免除益として課税対象になります。
このため,債務免除額と相殺できるような繰越欠損金や資産の評価損等がない限り,多額の税金が発生してしまいます。このため民事再生は困難となるでしょう。
少しでも早くご相談下さい。
経営者の方は,責任感がとても強い方が多く,事業の継続が困難となってしまっているにもかかわらず,周囲に迷惑をかけられないという一心で,ギリギリまで頑張ってしまう方も多くおられます。
このため,結果として会社に手持ち現金がほとんどなくなってしまい,破産すら困難な状況となった段階で,はじめてご相談にいらっしゃるケースも散見されるところです。
会社は,経営者がそれまで人生をかけて築いてきたものでもありますので,破産という決断はとても苦しいことであるのは確かです。
ですが,事業が継続できない状況になってしまったのであれば,早めに決断をして,経営者ご自身の人生をリスタートさせる必要があります。これまで築いてきたものを手放す決断には勇気が必要ですが,人生は一度の失敗で終わってしまうようなものではありません。
破産をしてしまったとしても,また,新たなチャレンジをすれば良いのです。
破産によって,従業員や取引先等に迷惑をかけてしまうことは事実ですが,少しでも早く勇気ある決断をすることで,周囲への迷惑が最小限に抑えられる可能性があるのもまた確かです。
事業の継続を困難に感じられている方や,破産まで考える段階なのかどうかもよく分からない方につきましても,破産をする段階ではなかったとしても,ご相談をいただくことで,ともに打開策を考えることができますので,ご相談が早すぎるということはありません。
破産をする必要があるという段階の場合,少しでもお早めにご相談いただくことで,周囲への迷惑を最小限にとどめ,円滑に会社を終わらせることができます。
事業の経営継続にお悩みを抱えておられる方,資金繰りが困難となってしまった経営者の方につきましては,是非,お早めにご相談ください。
法人破産に関するよくあるご質問
会社破産をしても年金はもらえますか?生活保護は受けられますか?
執筆者情報
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