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相続人間における遺産分割トラブルは,きちんとした備えがなければ誰でも遭遇する可能性のある身近なトラブルであり,近年,増加傾向にあります。
被相続人が生前に,形式の整った遺言書を作成していれば,多くの遺産分割トラブルは事前に防ぐことが出来るのですが,実際に作成している人は,意外と少ないのではないでしょうか。
遺言書の作成をするのはまだ早いとか,自分の死後のことを具体的に考えることに抵抗があるといった理由もあること等が原因と言われています。
きちんとした遺言を作成することは,遺された家族を紛争から守るという意味で,ご家族に対する愛情の示し方の一つですし,認知能力が低下してからでは,有効な遺言が作成できなくなることもあります。
このため,相続トラブルの防止のためには,まずは,遺言を作成すること,あるいは,資産をお持ちの方については,ある程度の年齢になった時点で,家族信託等を行うことで,認知能力の低下に備えることが必要となってきます。
また,実際に相続トラブルに発展してしまった場合には,後で後悔をしないためにも,また,紛争を少しでも早期に解決することで,親族での争いを悪化させないためにも,正しい法的知識が必要になります。
当事務所では,遺された家族を相続トラブルから守るため,遺言作成段階,あるいは,すでに相続トラブルに発展になってしまった段階のいずれにおいても,法的な問題等について様々な角度から検討をし,最適な解決方法を提案いたします。
このような場合は弁護士にご相談下さい。
遺言が見つかったがどうすれば良いかわからない
検認
民法上,遺言書(自筆証書遺言,秘密証書遺言)を保管している方(発見した方)は,相続の開始を知った後,遅滞なく,これを家庭裁判所に提出して,その検認を請求しなければならないとされています。また,封印のある遺言の場合には,家庭裁判所において相続人またはその代理人の立ちあいがなければ,開封することは出来ないとされています。
これらのことを怠ると,5万円以下の過料に処するとされているのです。
検認を申し立てるには,遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本,相続人全員の戸籍謄本,遺言者の子で死亡している方がいる場合,その子の出生から死亡までの戸籍謄本等,多数の書類を準備しなければならず,中には遠隔地に居住する相続人が存在する場合もあること等からすれば,これらの書類を全てご自分でそろえるのはとても煩雑でしょう。
そのようなこともあり,これから遺言を作成したいと思われている方は,自筆証書や秘密証書ではなく,公正証書で作成するほうが良いでしょう(公正証書は検認不要)。
検認は,遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
このため,検認後であっても,遺言の有効性が問題になる(偽造や,遺言者が作成時に認知症であった等)ことがあります。そのような場合には,遺言の有効性を巡って裁判で争ったり,遺言が無効であることを前提として遺産分割協議を行う必要があります。
検認が必要な遺言が発見された場合には,上記のような煩雑さや,その後の手続のことを考えると,弁護士にご依頼いただく方が良いでしょう。
遺言の執行
遺言書が有効であれば,自動的に遺言の内容が実現されるわけではなく,遺言の内容に従って実際に遺産を分ける必要があります。
たとえば,預貯金の解約や不動産の所有権移転等になります。
遺言書の内容を実現するためには,さまざまな煩雑な手続きが必要となる場合がありますので,そのような場合には「遺言執行者」を指定すると良いでしょう。
遺産の分け方が不公平なものとなっている(遺留分について)
被相続人は,遺言の作成にあたり,どの遺産を誰に相続させるのかを自由に決めることが出来ます。
遺留分
ただし,あなたにだけ一切の財産を相続させないといった内容のように,遺産の分け方が極端に不公平な内容となっている場合には,一定の割合で遺産を戻してもらえるかもしれません。
すなわち,遺留分といって,特定の相続人が,最低限の遺産を補償してもらえる制度があり,遺留分侵害額請求を行うことで,一定割合の相続財産を返してもらうことが出来るのです。
誰が遺留分を請求できる?
配偶者(夫・妻),子,直系尊属(両親,祖父母等),子の代襲相続人(子が先に亡くなっている場合の孫)
遺留分がない相続人
兄弟姉妹・甥姪など
割合は?
遺留分=遺留分権利者全体に残されるべき遺産全体に対する割合(総体的遺留分)
直系尊属のみが相続人である場合:被相続人の財産の3分の1が遺留分
それ以外の場合には:被相続人の財産の2分の1が遺留分
上記を元に,各人の個別的遺留分の割合は,以下の計算式で求めることが出来ます。
個別的遺留分の割合=総体的遺留分の割合×法定相続分の割合
遺留侵害額請求の方法
遺留侵害額請求は,交渉でも行うことが出来ますが,いったんもらった遺産を返せという話なので,実際には,なかなかうまくいかない場合が多くあります。
交渉で難しい場合には,調停を申し立て,それでもうまくいかない場合には,裁判を行う必要があります。
遺産を巡っては,範囲の問題,評価方法の問題等難しい法的な問題がありますので,遺留分減殺請求を行うにあたっては,弁護士へのご依頼をご検討された方が良いでしょう。
遺産の話し合いが進まない・揉めている
遺言が残っていない場合の遺産分割については,法定相続分といって,相続の割合が法律で決まっています。にもかかわらず,遺産分割では揉めてしまうことがよくあります。
その原因としては,主に,①分割の対象となる遺産の範囲が明確ではないこと,②評価しにくい財産があることがあります。
つまり,
①各相続人にとって,本当に,遺産はこれで全てなのか?ということが分からない場合があります。例えば,単純に預貯金や株式等の被相続人の財産を全ては把握しきれない場合や,相続人の一部(例えば,親を介護していたこと子ども)が,被相続人(親)からお金をもらっていたり,財産を使い込んでいたりする場合等があります。
②預貯金や上場株式の価値は一見して明確ですが,不動産や,非上場株式など評価しにくかったり,分割しにくかったりする財産がああります。
遺産分割協議手続きの流れ
相続財産等の調査
まず,どの財産を分割の対象とするのか(相続財産の範囲)を調査することから開始します。親族の方が把握している財産の他,遺された書類等を頼りに,他に財産がないか等の調査を行うことになります。
また,相続人の範囲を明確にすることで,各相続人の相続割合を明確にします。
↓
相手方相続人へ協議の申し入れ
相手方相続人(または代理人弁護士)と,遺産分割協議をしたいとの申し入れをし,合意に至れる場合には,遺産分割協議書を作成し,遺産分割は完了します。
↓
家庭裁判所への調停申し立て
協議が整わない場合には,家庭裁判所に遺産分割調停の申立を行います。
調停では,調停委員を通して,相手方や相手方代理人と話し合いを行います。
↓
遺産分割審判
調停は,あくまでも話し合いである以上,双方の意見が合致しなければ調停は成立しません。
このため,調停が不成立となってしまうと,審判といって,裁判所に遺産分割の内容を決めてもらうという手続きに移ることとなります。
財産が使い込まれている(特別受益)
共同相続人の中に,被相続人の生前に贈与を受けるなどした者がいる場合には,この相続人が他の相続人と同じ相続分を受けるとすれば不公平になります。
このため,民法は共同相続人間の公平を図ることを目的に,特別な受益を相続分の前渡しとみて,計算上贈与を相続財産に戻して相続分の算定をすることにしています(民法903条)。
すなわち,贈与を受けた財産を相続財産に戻した上で,この「みなし相続財産」に各共同相続人の相続分を乗じて各相続人の相続分(一応の相続分)を算定し,特別受益を受けた相続人は,一応の相続分から特別受益を控除した残額が,相続分となることとされています。
特別受益の種類
遺贈・・・遺言によって,財産を相続人等に譲渡すること。ただし,遺贈は,相続開始時に現存する相続財産の中から支弁される物であるから,相続開始時に現存する相続財産の額には加算しない。
生前贈与・・・婚姻等の際に支出された持参金,支度金,結納金,挙式費用等及び学資等
ただし,額が少額で被相続人の資産及び生活状況に照らして不要の一部と認められる場合や,相続人全員に同程度の贈与がある場合には持ち戻し免除の黙示の意思表示があったと認められる場合等があるため,特別受益に対する認識の違い等で,遺産分割の内容に争いがある場合には,弁護士へのご相談をおすすめいたします。
生前,被相続人の財産形成に協力してきたのに・・・(寄与分)
共同相続人の中に,被相続人の財産の維持または増加に特別の協力をした者があるときに,相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し,その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることによって,共同相続人間の公平を図る制度があります。
代表的な寄与行為
・家業従事型:農業,商工業等に従事して,被相続人の財産を増加させた
・金銭等の出資:被相続人の事業に関して財産上の給付等をした場合
・療養看護型:病気療養中の被相続人の療養介護に従事した場合
・扶養型:病気療養中の被相続人の療養介護に従事した場合
・財産管理型:被相続人の財産を管理することによって財産の維持形成に寄与した場合
・先行相続による相続放棄:先行相続において特定の相続人が相続の放棄をし,これによって他の相続人の相続分を増大させた場合
ただし,金銭等の出資型の場合を除いて,特別の寄与と言えるための具体的要件は①特別の貢献,②無償性,③継続性,④専属性が必要となります。
相続放棄について
相続財産の中に債務の方が多い場合等は,相続をしないという選択をされる方もおられます。
その場合,相続放棄の手続きをすることになります。
相続放棄は,相続の開始を知ったときから3か月以内に,家庭裁判所に対し,相続放棄申述書を提出して行います。
被相続人の財産の内容を調査した上で,債務が多いと判断した場合に,必要書類をそろえて申し立てることになりますので,3か月というのは意外と短く感じられるかも知れません。
また,相続人が,相続財産の全部,または一部を処分,隠匿,消費したと見なされるような際には,相続人が相続を単純承認したものとみなされるので,相続放棄が認められない場合もある等注意が必要です。
このため,財産調査の段階から,弁護士へ依頼を行うと安心といえます。
相続問題を弁護士に依頼するメリット
遺産分割手続の進め方に慣れている弁護士に依頼されることで,適時に適切な手続きを踏むことで,スムーズに進行する可能性が高まりますし,早期に,争点が明確化されることで,ご自身が手探り状態で手続きを進めようとする場合と比較して,早期解決が見込まれます。
また,相続財産の評価方法,特別受益,寄与分等の争点においては,専門知識が要求されるケースも多くあるため,弁護士に依頼することで,ご自身に有利な結論を導くことが出来る場合も多々あります。
加えて,相続トラブルは骨肉の戦いなどといわれるように,一般に,長期化,泥沼化しやすいトラブルです。ご自身での対応を行うことで,相手方相続人との間で,感情的な争いに巻き込まれ,精神的に疲弊してしまうケースも多いことから,相手と直接話をしなくて済むように,弁護士に一任される方も多くいらっしゃいます。
相続問題にお悩みの方は,当事務所にご相談いただければと思います。
執筆者情報
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